
結論からいうと、親が認知症だからという理由だけで、不動産を売却できなくなるわけではありません。
大切なのは、親本人が不動産売却の内容を理解し、自分の意思で判断できる状態かどうかです。
親本人が売却について理解し、意思表示できる状態であれば、本人を売主として売却を進められる可能性があります。
一方、不動産を売ることの意味や契約内容を理解して判断することが難しい場合、子どもが親の代わりに勝手に契約することはできません。
その場合には、成年後見制度などを利用して売却する方法を検討することがあります。
最初に確認したいこと
① 不動産の名義は誰?
② 親本人に売却する意思がある?
③ 親本人が売却内容を理解して判断できる?
④ すでに成年後見人・保佐人・補助人はいる?
⑤ 親が住んでいる家?施設入所前に住んでいた家?
⑥ 売却する必要性は何?
⑦ 住宅ローン・抵当権は残っていない?
ここでは、西宮市で認知症の親が所有する家や土地の売却を考えている方に向けて、売却前に知っておきたいポイントを分かりやすく解説します。
① 「認知症=不動産を売却できない」ではない
まず知っておきたいのは、認知症と診断されていることだけで、一律に不動産を売却できなくなるわけではないということです。
認知症の状態には個人差があります。
大切なのは、病名だけではなく、本人が不動産売却について理解し、自分で判断できる状態かどうかです。
例えば、
・どの不動産を売るのか
・なぜ売るのか
・いくらくらいで売るのか
・売却すると所有権を失うこと
・売却代金を受け取ること
など、契約に関する内容を理解したうえで意思表示できるかが重要になります。
② 子どもだから代わりに売却できるわけではない
よくある誤解が、「親が認知症なら子どもが代わりに契約すればいい」というものです。
しかし、親名義の不動産は親の財産です。
子どもや配偶者であっても、家族という理由だけで本人の不動産を自由に売却することはできません。
本人が契約内容を理解して判断することが難しい場合には、本人を保護するための法的な手続きを検討する必要があります。
③ まず「本人の意思」と「判断できる状態か」を確認する
不動産売却を考え始めたら、いきなり売買契約へ進むのではなく、まず親本人の状態を確認しましょう。
本人確認や売却意思の確認は、不動産会社だけでなく、所有権移転登記に関わる司法書士にとっても重要なポイントです。
判断能力に不安がある場合には、早い段階で司法書士や弁護士などの専門家へ相談することが大切です。
判断能力が心配な場合の進め方
① 親本人の現在の状態を確認
② 不動産会社へ事情を伝える
③ 不動産の査定を行う
④ 司法書士・弁護士などへ相談
⑤ 必要に応じて成年後見制度などを検討
④ 判断することが難しい場合は成年後見制度を検討する
認知症などによって本人の判断能力が十分ではなく、自分で不動産売却を進めることが難しい場合には、成年後見制度を利用することがあります。
法定後見制度には、本人の判断能力の程度などに応じて「後見」「保佐」「補助」があります。
家庭裁判所が本人の状況などを確認し、成年後見人等を選任します。
なお、「子どもが申し立てれば必ずその子どもが成年後見人になる」という制度ではありません。
家庭裁判所が本人にとって適切な人を選任します。
⑤ 成年後見人が選ばれれば、すぐに家を売れる?
成年後見人が選任されたからといって、本人の不動産を自由に売却できるわけではありません。
成年後見人は、本人の財産を本人のために管理する立場です。
そのため、「家族にとって便利だから」「空き家だからとりあえず売りたい」という理由だけではなく、売却が本人にとって必要・相当なのかを考えて進める必要があります。
施設費や生活費を確保する必要がある、空き家の維持管理が負担になっているなど、売却の事情を整理しておきましょう。
⑥ 親の「居住用不動産」の売却には家庭裁判所の許可が必要
成年後見人等が本人に代わって本人の居住用不動産を処分する場合には、家庭裁判所の許可が必要になる場合があります。
ここでいう居住用不動産は、現在親本人が住んでいる家だけとは限りません。
親が施設や病院へ入る前に生活していた家や、将来戻って住む可能性がある家なども含まれることがあります。
成年後見人等が家庭裁判所の必要な許可を得ずに居住用不動産を処分した場合、その処分は無効となります。
そのため、成年後見制度を利用して実家を売却するときは、売買契約のスケジュールを通常の売却以上に慎重に組む必要があります。
⑦ 家庭裁判所は何を確認する?
居住用不動産の処分許可を申し立てる場合、売却する必要性や売却条件などを説明する資料が必要になります。
裁判所の案内では、売却の場合の資料として、不動産の登記事項証明書や評価に関する資料、不動産会社が作成した査定書などが挙げられています。
つまり、成年後見制度を利用するケースでも、不動産会社による査定は重要な準備の一つになります。
売却前に整理しておきたいこと
・なぜ売却する必要があるのか
・現在の査定価格はいくらか
・売却条件は本人にとって不利益になっていないか
・売却後、本人はどこで生活するのか
・売却代金をどのように本人のために管理するのか
⑧ 施設に入った実家でも家庭裁判所の許可が必要になることがある
「もう施設に入っているから実家は居住用不動産ではない」と考えてしまう方もいるかもしれません。
しかし、本人が現在住んでいなくても、施設へ入る前に住んでいた家などは居住用不動産として扱われることがあります。
そのため、施設入居後に成年後見人が実家を売却する場合も、家庭裁判所への確認が重要です。
⑨ 成年後見制度を申し立てる前に査定してもいい?
成年後見人がまだ選任されていなくても、不動産の価格を調べたり、不動産会社へ売却相談をしたりすることはできます。
むしろ、現在の不動産価値を把握しておくことで、
・施設費や生活費としてどの程度確保できるのか
・売却する必要があるのか
・家を残しておく選択肢はあるのか
などを家族で検討しやすくなります。
ただし、査定をすることと、本人に代わって売買契約を締結することは別です。
⑩ 売却を急ぐ前に家財や重要書類を確認する
親が施設へ入居すると、家族が実家の片付けを始めることがあります。
しかし、不動産売却を考えている場合には、重要書類を先に処分しないよう注意しましょう。
探しておきたい書類
□ 不動産を購入したときの売買契約書
□ 購入代金・仲介手数料などの領収書
□ 登記関係書類
□ 建築・リフォーム関係書類
□ 測量図・境界確認書
□ 固定資産税関係書類
□ 住宅ローン関係書類
家財道具が残っていても、まず査定できる場合があります。
片付けやリフォームなどに大きな費用をかける前に、現状のまま不動産会社へ相談する方法もあります。
⑪ 住宅ローンや抵当権も確認する
親の不動産に住宅ローンが残っている場合には、売却代金などで完済できるか確認します。
ローンを完済していても、登記簿上は抵当権が残っているケースがあります。
売却を考えるときは、不動産の査定とあわせて登記内容やローン残高も確認しておきましょう。
⑫ 「認知症になる前に売っておけばよかった」とならないために
実家について家族で話すのは、どうしても後回しになりがちです。
しかし、親が元気なうちであれば、
「これからも家に住みたい」
「施設へ入ったら売ってほしい」
「家は残してほしい」
など、親本人の希望を確認できます。
将来の売却を決めることが目的ではありません。
「この家を将来どうしたい?」と家族で話しておくことが大切です。
認知症の親の不動産売却|基本的な流れ
売却までの基本的な流れ
① 不動産の名義・登記内容を確認
② 親本人の意思・判断能力を確認
③ 不動産会社へ事情を伝えて査定
④ 司法書士・弁護士など専門家へ相談
⑤ 必要に応じて成年後見制度を検討
⑥ 成年後見人等が選任される
⑦ 売却条件・売却の必要性を整理
⑧ 居住用不動産なら家庭裁判所へ処分許可を申立て
⑨ 必要な許可を得て売却手続き
⑩ 売却代金を本人の財産として管理
よくある質問
Q1. 認知症と診断されたら家は売れませんか?
認知症という診断名だけで一律に売却できないと決まるわけではありません。
本人が不動産売却の内容を理解し、自分の意思で判断できる状態かどうかが重要です。
Q2. 子どもが委任状を書けば売却できますか?
親本人が有効に代理権を与えられる状態かどうかなどを確認する必要があります。
「親子だから委任状があれば必ず売れる」と考えず、判断能力に不安がある場合は専門家へ相談しましょう。
Q3. 成年後見人になれば自由に家を売れますか?
自由に売却できるわけではありません。成年後見人は本人の利益のために財産を管理します。
特に本人の居住用不動産を売却する場合には、家庭裁判所の許可が必要です。
Q4. 親が施設に入って空き家になった実家も許可が必要?
成年後見人等が売却する場合、施設へ入る前に本人が住んでいた家なども居住用不動産に含まれることがあります。
家庭裁判所への処分許可が必要になる可能性があるため、事前に確認しましょう。
Q5. 成年後見人を決める前でも査定できますか?
不動産会社へ相談し、現在の査定価格を確認することはできます。
査定価格は、売却する必要性や今後の生活費などを検討するための資料にもなります。
Q6. 家族が成年後見人になることはできますか?
親族を成年後見人候補者として申し立てることはできますが、候補者が必ず選任されるとは限りません。
家庭裁判所が本人の状況などを考慮して成年後見人を選任します。
まとめ|認知症の親の不動産は「契約する前」の確認が重要
認知症の親が所有する不動産を売却するときに最も注意したいのは、売却を急いで契約を進めてしまうことです。
まず親本人の売却意思と判断できる状態かを確認し、難しい場合には成年後見制度など必要な手続きを検討します。
大切なポイント
① 認知症という診断名だけで判断しない
② 子どもだけで勝手に売却しない
③ 本人の意思・判断能力を確認する
④ 必要なら成年後見制度を検討する
⑤ 居住用不動産の売却では家庭裁判所の許可に注意する
⑥ 売却前に不動産の査定価格を確認する
西宮市で「親が認知症になり実家をどうすればいいか分からない」「施設費のために売却を考えている」「成年後見制度を利用すべきか分からない」という場合は、いきなり売却手続きを進めるのではなく、不動産会社と司法書士・弁護士などの専門家へ早めに相談しながら進めることが大切です。
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