
結論からいうと、兄弟姉妹などで共有名義になっている相続不動産を「不動産全体として売却する」場合は、原則として共有者全員で売却について合意する必要があります。
そのため、共有名義の相続不動産では、査定価格だけでなく、「誰がどの持分を持っているのか」「全員が売却に同意しているのか」「売却代金をどのように受け取るのか」などを早めに確認することが大切です。
親の家や土地を兄弟姉妹で相続すると、
「私は売りたいけれど、兄は残したいと言っている」
「自分の持分だけ売ることはできる?」
「売却代金は均等に分ければいい?」
「代表者一人だけで売却手続きを進められる?」
といった問題が起こることがあります。
共有名義の相続不動産を売る前に確認したいこと
① 共有者は誰?
② それぞれの持分は何分の何?
③ 相続登記は終わっている?
④ 全員が売却に同意している?
⑤ 誰が売却の窓口になる?
⑥ 売却代金をどう受け取る?
⑦ 売却費用をどう負担する?
⑧ 税金はそれぞれどうなる?
ここでは、西宮市で共有名義の相続不動産を売却するときに確認したいポイントを順番に解説します。
① まず「共有者」と「持分」を確認する
最初に確認したいのは、現在の登記名義と、それぞれの共有持分です。
例えば兄弟3人で共有していても、必ず3分の1ずつとは限りません。
登記事項証明書などで、誰がどの割合の持分を所有しているのかを確認しましょう。
また、相続登記がまだ終わっておらず、亡くなった親や祖父母の名義のままになっている場合もあります。
② 相続登記が終わっているか確認する
2024年4月1日から相続登記は義務化されています。
原則として、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する必要があります。
2024年4月1日より前に発生した相続についても義務化の対象で、一定の場合には2027年3月31日が期限になります。
また、相続人申告登記をしていても、それだけで売却のための所有権関係が整うわけではありません。
共有名義の相続不動産を売却する場合は、不動産会社への相談と並行して、司法書士へ登記状況を確認すると進めやすくなります。
③ 不動産全体を売るなら共有者全員で話し合う
共有不動産全体を第三者へ売却する場合は、原則として共有者全員の合意が必要です。
例えば兄・姉・弟の3人で共有している実家について、兄と姉が売却に賛成していても、弟が反対している状態で、不動産全体を通常の方法で売却することはできません。
そのため、不動産会社へ正式に売却を依頼する前に、共有者同士で今後の方向性を確認しておくことが大切です。
④ 意見がまとまらないときは、まず査定価格を確認する
共有不動産では、「売りたい人」と「残したい人」に意見が分かれることがあります。
そのような場合、感情だけで話し合うとなかなか結論が出ないことがあります。
そこで、まず不動産の査定価格や年間の維持費、売却に必要な費用などを確認してみましょう。
家族で共有したい情報
・現在の査定価格
・固定資産税などの維持費
・管理や修繕にかかる費用
・売却した場合に必要な費用
・売却後に手元に残る金額の目安
・今後誰かが利用する予定があるか
客観的な数字が分かることで、共有者同士で話し合いやすくなることがあります。
⑤ 自分の「共有持分だけ」を売ることはできる?
共有者は、原則として自分が所有する共有持分そのものを処分することができます。
ただし、「不動産全体を売ること」と「自分の共有持分だけを売ること」は全く別の話です。
共有持分だけを購入した第三者は、他の共有者と一つの不動産を共有することになります。
そのため、一般的な住宅や土地の売買とは買主層や取引条件が異なることがあります。
「兄弟と話がまとまらないから、とりあえず自分の持分だけ売ろう」と急いで判断せず、不動産全体を売却する方法や他の共有者への持分移転なども含めて検討しましょう。
⑥ 一人が不動産を取得する方法もある
共有状態を解消する方法は、第三者へ不動産全体を売却することだけではありません。
例えば、兄弟のうち一人が不動産を取得し、他の相続人に金銭を支払う方法などが検討されることもあります。
ただし、遺産分割の方法や税務上の取扱いは状況によって異なります。
まだ遺産分割が終わっていない場合は、司法書士・弁護士・税理士などの専門家へ確認しながら進めましょう。
⑦ 売却の窓口になる人を決める
共有者が多い場合、不動産会社から全員へ個別に連絡すると、意思確認や日程調整に時間がかかります。
そこで、家族の中で連絡窓口になる人を決めておくと進めやすくなります。
ただし、窓口を一人に決めたからといって、その人だけの判断で共有不動産全体を売却できるわけではありません。
重要な条件については共有者全員で確認しましょう。
⑧ 売出価格・値下げ・購入申込みの判断も共有する
共有者全員が「売ること」には同意していても、売却条件について意見が分かれることがあります。
例えば、
「3,000万円なら売りたい」
「2,800万円でも早く売りたい」
というように、希望価格が違うことがあります。
売却開始前に共有者で決めておきたいこと
□ 売出価格
□ どこまで価格交渉に応じるか
□ 売却時期の希望
□ 家財・残置物をどうするか
□ 修繕・解体・測量などの費用負担
□ 購入申込みが入った場合の連絡方法
あらかじめ考え方を共有しておくことで、購入申込みが入った後の判断がしやすくなります。
⑨ 売却代金は持分を確認して精算する
共有不動産を売却した場合、売却代金については、それぞれの所有持分を確認したうえで精算することが基本になります。
例えば持分が2分の1ずつなら、単純な売却代金だけを見ればそれぞれ2分の1が一つの基準になります。
ただし、仲介手数料、測量費、解体費、登記費用などを誰がどのように負担するのかによって、最終的な受取額は変わります。
売却代金を一人が受け取って後から自由に分配するのではなく、持分や費用負担、税務上の取扱いを確認したうえで精算方法を決めましょう。
⑩ 売却費用を誰が負担するか決めておく
売却時には、物件によってさまざまな費用が発生します。
売却時に考えられる主な費用
・仲介手数料
・印紙税
・登記関係費用
・測量費
・解体費
・家財・残置物の撤去費
・その他売却に必要となる費用
共有者の一人が先に費用を立て替える場合には、後でトラブルにならないよう、精算方法について記録を残しておくと安心です。
⑪ 税金は共有者ごとに計算する
共有不動産を売却した場合の譲渡所得は、原則として各共有者が自分の持分に応じて計算します。
そのため、共有者全員をまとめて一つの譲渡所得として計算するわけではありません。
取得費や譲渡費用、利用できる税制特例などを確認し、それぞれが必要に応じて確定申告を行います。
⑫ 3,000万円特別控除は「共有者ごと」に判定される場合がある
共有しているマイホームを売却した場合、居住用財産の3,000万円特別控除については、適用できるかどうかを共有者ごとに判定します。
要件を満たす共有者については、一人につき最高3,000万円の控除を受けられる場合があります。
ただし、家屋と土地の所有関係や実際の居住状況などによって取扱いが異なります。
「共有だから全員が必ず3,000万円控除を使える」という意味ではありません。
売却前に税理士や税務署へ確認しましょう。
⑬ 相続した空き家の特例も相続人数に注意
相続した実家を共有している場合には、「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」を利用できる可能性もあります。
2026年現在、一定の要件を満たす場合には譲渡所得から最高3,000万円まで控除できます。
ただし、2024年1月1日以後の譲渡で、対象となる家屋や敷地を取得した相続人の数が3人以上の場合は、一人あたりの控除額は最高2,000万円となります。
建物の要件や相続後の利用状況、売却期限など複数の条件があるため、早めに確認しておきましょう。
⑭ 一人だけ連絡が取れない場合はどうする?
共有者が多い相続不動産では、「相続人の一人と連絡が取れない」というケースもあります。
その場合でも、状況によって利用を検討できる法的な手続きがあります。
ただし、不動産会社だけで判断できる問題ではありません。
連絡が取れない共有者がいる場合や、所在が分からない共有者がいる場合には、弁護士や司法書士などへ早めに相談しましょう。
⑮ 共有者同士で話がまとまらない場合
査定価格や売却条件を確認しても、共有者同士で合意できない場合があります。
その場合は、無理に一人で売却を進めるのではなく、問題点を整理することが大切です。
話がまとまらないときに整理したいこと
・売却そのものに反対している?
・価格だけが合わない?
・思い出のある家を残したい?
・誰かが住みたい?
・売却代金の分け方でもめている?
・過去の維持費の負担でもめている?
不動産の価格や売却方法については不動産会社へ、権利関係や相続人同士の法的な争いについては弁護士などへ相談し、内容に応じて相談先を分けましょう。
⑯ 共有名義にする前に「売却する予定」があるなら相談する
まだ遺産分割が終わっておらず、「とりあえず兄弟全員の共有名義にしておこう」と考えている場合は、一度今後の予定を確認してみましょう。
将来的に売却する予定が決まっている場合、共有者が増えるほど、売却時の意思確認や手続きが複雑になることがあります。
誰が不動産を取得するのか、売却して代金を分けるのかなど、遺産分割の段階から専門家へ相談することも選択肢です。
よくある質問
Q1. 兄弟3人のうち2人が賛成すれば実家を売れますか?
共有不動産全体を売却する場合は、原則として共有者全員の合意が必要です。
多数決だけで通常の売却を進められるわけではありません。
Q2. 自分の持分だけなら売れますか?
共有者は原則として自分の共有持分を処分できます。
ただし、持分だけの売却は不動産全体の売却とは取引条件や買主層が異なるため、急いで決めず、他の共有者との話し合いも含めて検討しましょう。
Q3. 共有者の一人が遠方に住んでいても売却できますか?
遠方に住んでいるという理由だけで売却できないわけではありません。
手続きによっては郵送や電子的方法などを利用できる場合があります。本人確認や必要書類などを早めに確認しましょう。
Q4. 売却代金は代表者の口座に全部振り込んでもらってもいい?
受取方法を安易に決めない方が安心です。
共有者それぞれの持分、費用負担、税務上の取扱いなどを確認し、不動産会社や金融機関、必要に応じて税理士などと精算方法を相談しましょう。
Q5. 共有者の一人と連絡が取れません。絶対に売れませんか?
「絶対に売れない」とは限りません。
所在等不明共有者がいる場合などに利用を検討できる裁判所の手続きがあります。状況によって対応が異なるため、弁護士や司法書士などへ相談しましょう。
Q6. 相続登記が終わっていなくても査定できますか?
査定や売却相談を先に始められる場合があります。
ただし、実際の売却に向けては相続登記などの手続きが必要になるため、不動産会社への相談と並行して司法書士などへ確認しましょう。
まとめ|共有名義は「売る前の話し合い」が重要
共有名義の相続不動産は、一人で所有している不動産よりも、売却前に確認することが多くなります。
特に大切なのは、共有者全員が同じ情報を持ったうえで話し合うことです。
売却前に確認したい8つのポイント
① 共有者と持分を確認する
② 相続登記を確認する
③ 全員の売却意思を確認する
④ 売出価格・最低希望条件を話し合う
⑤ 売却費用の負担を決める
⑥ 売却代金の受取方法を確認する
⑦ 各共有者の税金を確認する
⑧ 話がまとまらない場合は専門家へ相談する
共有者同士でまだ意見がまとまっていなくても、現在の査定価格を確認することは話し合いの第一歩になります。
西宮市で兄弟姉妹などと共有している相続不動産について、「売りたいけれど何から始めればいいか分からない」という場合は、まず登記内容と現在の不動産価値を確認してみましょう。
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