
「生まれ育った家だから、安く売りたくない」
「両親が大切にしてきた家なので、この価格では手放したくない」
「売った方がいいことは分かっているけれど、なかなか決断できない」
相続した実家を売却するとき、こうした気持ちになるのは珍しいことではありません。
実家は、単なる土地と建物ではありません。
家族で食事をした場所、子どものころに過ごした部屋、庭に植えた木、親が大切にしていた家具など、たくさんの「思い出」が残っています。
一方、不動産として売却するときには、立地・土地の広さ・建物の状態・周辺相場などから「市場での価格」を考える必要があります。
この2つを一緒にしてしまうと、「この金額では売りたくない」「でも持ち続けるのも大変」という状態になり、なかなか前へ進めなくなることがあります。
今回は、西宮市で相続した実家の売却を考えている方へ、「思い出」と「価格」をどう整理すればよいのかを分かりやすくお伝えします。
実家を売ることは、思い出を手放すことと同じではありません。
「家族にとって大切な価値」と「不動産としての市場価値」を分けて考えることが、後悔の少ない売却につながります。
実家には2つの「価値」がある
相続した実家を考えるとき、まず知っておきたいのが「価値は一つではない」ということです。
思い出・愛着・家族との時間・親が大切にしてきたものなど。
② 不動産としての価値
立地・土地面積・建物の状態・築年数・道路・周辺相場・購入需要などから考える市場価値。
どちらが正しい、間違っているというものではありません。
ただし、売却するときには、この2つを一度分けて考えることが大切です。
「親が大切にした家だから高く売りたい」という気持ち
実家の査定をしたとき、査定価格を見て「そんなに安いの?」と感じる方もいます。
例えば、親が何十年も住宅ローンを払い、大切に手入れをしながら暮らしてきた家であれば、家族にとってはとても大きな価値があります。
しかし購入する側は、その家で過ごした家族の思い出ではなく、現在の不動産としての条件を見て購入を判断します。
- 駅からの距離
- 土地の広さ・形
- 道路との関係
- 建物の築年数
- 建物の状態
- リフォームの必要性
- 周辺の成約事例
- 現在の購入需要
そのため、「家族にとって大切な家だから高い」ということと、「市場で高く売れる」ということは必ずしも同じではありません。
査定価格=売らなければならない価格ではない
ここは、実家の売却を考えるときにぜひ知っておいてほしいところです。
不動産会社から査定価格を提示されたからといって、その金額で必ず売り出さなければならないわけではありません。
査定価格
不動産会社が市場や物件の条件などから「このあたりで成約する可能性がある」と考える価格。
売出価格
実際に市場へ出す価格。売主様の希望も踏まえて決めます。
売却価格(成約価格)
最終的に買主との合意によって売買契約が成立した価格。
この3つは同じとは限りません。
「査定では3,000万円と言われたから、3,000万円で売らなければならない」ということではないのです。
最初から思い出を切り離す必要はない
だからといって、「思い入れは価格に関係ないので忘れてください」と考える必要もありません。
例えば、家族で話し合って、
- この金額なら納得して手放せる
- まずは少し高めの価格から挑戦してみたい
- 急いで売る必要はない
- ○か月だけこの価格で販売してみたい
という希望があるのであれば、それも売却計画を考えるうえで大切な条件です。
重要なのは、希望価格と市場価格の違いを理解したうえで販売することです。
「高く売り出す」と「高く売れる」は違う
思い入れがある実家では、「とりあえず高く出しておけばいいのでは?」と思うこともあります。
もちろん、売主様が納得できる価格から販売を始める方法もあります。
ただし、市場価格から大きく離れた価格で長期間販売すると、購入希望者から「ずっと売れていない家」と見られてしまう可能性があります。
そのため、高めの価格から挑戦するときは、最初から次のようなルールを決めておくと整理しやすくなります。
「まず3か月、この価格で販売する」
「問い合わせがほとんどなければ価格を見直す」
「内覧はあるのに申込みがなければ原因を確認する」
このように、期間と反響を見ながら判断する方法があります。
価格を下げる前に「なぜ売れないのか」を確認する
売れないからといって、すぐに価格を下げればよいとは限りません。
まず確認したいのは、販売を始めてからの反響です。
- 物件ページは見られているか
- 問い合わせはあるか
- 内覧希望はあるか
- 内覧後にどのような感想があったか
- 同じ価格帯の競合物件はどうなっているか
例えば、物件ページ自体がほとんど見られていないのであれば、写真や広告方法などに改善できる部分があるかもしれません。
反対に、内覧は多いのに購入申込みにつながらない場合は、価格や建物の状態などが判断材料になっている可能性があります。
「売れない=すぐ値下げ」ではなく、反響を確認してから次の一手を考えることが大切です。
思い出は「家そのもの」以外の形でも残せる
実家を売ることに抵抗がある理由が「思い出がなくなってしまう気がする」ということであれば、売却前に思い出を残す方法を考えてみてもよいでしょう。
- 家の外観や各部屋を写真に残す
- 家族で実家を訪れて写真を撮る
- 庭の木や花を写真に残す
- 柱の傷や子どもの身長を書いた場所を撮影する
- 親が大切にしていた家具や食器を一つ残す
- アルバムや手紙を整理する
- 家族で実家の思い出を話す時間をつくる
「全部残す」か「全部処分する」かの二択ではありません。
残したい思い出を選んでから家を手放すことで、気持ちの整理がつきやすくなる方もいます。
家族によって実家への思いは違う
兄弟姉妹で実家を相続した場合、家への思い入れが全員同じとは限りません。
例えば、
- 長男は「できれば残したい」
- 長女は「管理が大変なので売りたい」
- 別の兄弟は「できるだけ高く売りたい」
ということもあります。
ここで大切なのは、「誰が正しいか」を決めることではありません。
それぞれが、何を大切にしているのかを確認することです。
① 売ること自体に反対する人はいないか
② いくらなら納得できるか
③ いつまでに売りたいか
④ 家財や思い出の品をどうするか
⑤ 売却に必要な費用をどう負担するか
⑥ 売却代金をどう分けるか
「売らない」という選択肢も一度考えてみる
迷っている段階で、無理に売却を決める必要はありません。
一度、売らない場合についても考えてみましょう。
- 自分や家族が住む
- 賃貸する
- しばらく空き家として所有する
- 将来使う予定がある
そのうえで、固定資産税、草木の管理、建物の維持修繕、火災保険、遠方なら交通費など、所有し続けるために必要な費用と手間も確認します。
「残したい」という気持ちだけでなく、「残した場合に誰が管理するのか」まで考えることで、家族で判断しやすくなります。
売却を決める前に査定だけしてもいい
「査定を頼んだら、売らなければならないのでは?」と思う方もいますが、売却を決める前に価格を知ることも大切です。
例えば、
- 今売った場合はいくらくらいか
- その価格になった理由は何か
- 建物を残して売るのか
- 解体して土地として売るのか
- 修繕や片付けは必要か
- どのくらいの期間を想定するのか
などを聞いてから、家族で考えても構いません。
査定は「売る決断」ではなく、「判断するための材料を集めること」と考えるとよいでしょう。
古い売買契約書や建築資料も探しておく
実家を整理するときは、思い出の品だけでなく、不動産に関する古い書類も捨てないようにしましょう。
- 親が家を購入したときの売買契約書
- 土地の購入資料
- 建物の建築請負契約書
- 領収書
- 測量図
- 登記関係書類
などは、売却や税金の計算で必要になる場合があります。
相続した土地・建物を売却した場合、取得費や取得時期は原則として亡くなった方から引き継ぎます。古い購入資料は、譲渡所得を計算するときにも重要です。
取得費が分からない場合には、一定の場合、売却代金の5%を概算取得費として計算する方法があります。そのため、実家を片付けるときは、不動産関係の書類を先に確認しておくことをおすすめします。
相続登記が終わっているかも確認する
実家を売却する場合は、相続登記についても確認します。
相続登記は2024年4月1日から義務化されており、原則として、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に申請する必要があります。
売却相談や査定は相続登記前でも進められますが、実際に買主へ所有権を移すためには、相続関係を整理し、必要な相続登記を行います。
実家を売るか迷ったときの整理方法
何を残したいのか、家族で確認する
↓
STEP2 不動産としての価格を知る
査定を取り、価格の根拠を確認する
↓
STEP3 売らない場合も考える
維持費・管理・将来の利用予定を確認する
↓
STEP4 家族の希望を整理する
価格・時期・家財・費用・売却代金について話す
↓
STEP5 販売方法を決める
希望価格と市場価格のバランスを考える
↓
STEP6 反響を見ながら調整する
問い合わせ・内覧・購入希望者の反応を確認する
よくある質問
Q1. 査定価格に納得できなければ売らなくてもいいですか?
もちろんです。査定は売却を決めるための判断材料の一つです。価格の根拠を確認し、家族で納得してから売却を進めましょう。
Q2. 査定価格より高く売り出すことはできますか?
売主様の希望を踏まえて売出価格を決めることはできます。ただし、市場価格との差が大きい場合は売却期間が長くなる可能性もあるため、販売期間や価格を見直すタイミングをあらかじめ考えておくとよいでしょう。
Q3. 実家の荷物は全部捨ててから査定した方がいいですか?
必ずしも全部片付けてから査定する必要はありません。まず査定を受け、売却方法を決めてから片付けの範囲を考える方法もあります。
Q4. 兄弟で希望価格が違う場合はどうすればいいですか?
まず査定価格とその根拠を共有したうえで、それぞれが「なぜその価格を希望しているのか」を話してみましょう。金額だけではなく、売却時期や思い入れなどが理由になっている場合があります。
Q5. 思い出があって、なかなか売る決断ができません。
すぐに結論を出す必要はありません。まず実家を残した場合の費用や管理、現在の市場価格を確認してから考えてもよいでしょう。写真や思い出の品を残してから売却する方法もあります。
Q6. 古い売買契約書は残しておいた方がいいですか?
はい。親が不動産を購入したときの売買契約書や建築資料などは、売却時の取得費を確認するために重要になる場合があります。実家の片付けで誤って処分しないようにしましょう。
Q7. 売るか残すか決めていなくても不動産会社に相談できますか?
相談できます。現在の価格や売却した場合の流れ、残した場合に考えられる管理などを整理してから判断する方法もあります。
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思い出を大切にしながら、これからのことを考える
相続した実家を売るかどうかは、価格だけでは決められないことがあります。
家族にとって大切な場所だからこそ、迷うのは自然なことです。
だからこそ、最初から「売る・売らない」の二択にするのではなく、まず思い出と不動産としての価格をそれぞれ整理してみることをおすすめします。
残しておきたいものを残し、現在の市場価格を知り、家族で話し合う。
そのうえで「売ろう」と決めたのであれば、思い出を捨てるのではなく、大切な思い出を持ったまま、家の役割を次の方へ引き継ぐと考えてみてもよいのではないでしょうか。
アイテラス不動産では、西宮市で相続した実家について、「まだ売ると決めていない」「価格だけ知って家族で考えたい」という段階からご相談いただけます。
大切な実家だからこそ、急いで結論を出すのではなく、一つずつ整理しながら一緒に考えていきます。
本記事は2026年時点の制度・一般的な不動産取引をもとにまとめています。相続登記、譲渡所得、各種特例などは個別の状況によって取扱いが異なります。必要に応じて司法書士・税理士等の専門家へご確認ください。

